2019年、動きがあった札幌の映画館

「あのときこうだった」という時代感は案外ちゃんと語りにくいもので、特に過渡期の前後となると後から振り返ったとき時系列を混同しがち。

あまり詳しくない人間でも『あのときはこうだった』というのを書きとどめておくのも悪くないかな、ということで今年に大きな変化のあった地元の映画館について書く。

札幌の映画館概況

4つの映画館があり、大抵の映画をみられるので腐っても北日本最大の都市。どの映画館も札幌市中心街に居を構えているので勤め人でもアクセスしやすいというのが嬉しい。

シネマフロンティアとユナイテッド・シネマ札幌という2つの大手経営のシネコンに加えて、シネコンではかからないタイプの映画をかける娯楽系のスガイディノスディノスシネマズ)/アート系や社会派中心のシアターキノという2つの小規模劇場があって、大作映画はもちろんのこと、単館系の映画であっても(東京などから1,2ヶ月遅れということもよくあるが)Twitterで話題になるような映画なら、イベント上映限定みたいなものでない限りはほとんどが映画館でみられる。

……のだが、今年、その状況にやや変化があったのと、メインで使ってる映画館で非常に大きな工事があった。

ユナイテッド・シネマ札幌

1993年にサッポロファクトリーIMAXシアターを開業。以後名前やスクリーン数を変えて営業を続けている。

2010年にIMAXデジタルシアターに改修され、スクリーンが大きい上に座席の傾斜がきつくて日本でもかなり良いIMAXシアターのひとつ。

……なのだが、IMAXに限らず長年交換されてなくてクッションがへたれてカバーも所々やぶけてる座席やトイレなど、古びてる感はいなめなかった。

IMAXデジタルシアターとはいってもエキスポシティや成田のように4Kではなかったし、それだけならまだ「まあ、郊外の特別なシアターだけにしかない4Kなら…」と誤魔化せたものだが、2019年7月にグランドシネマサンシャインが池袋で開業して「やっぱ東京・大阪みたいな大都市圏と違って満席になることも少ない札幌じゃ…」と札幌の映画ファン(クソデカ主語)は落胆していた。

ところが2019年夏、突然の館内リニューアルの告知。チケット販売所や売店(カウンター)のリニューアルに加え、すべての座席の交換、そしてIMAXレーザー。

ということで2019年冬からは4KのIMAXで大作映画を楽しめるようになった。

カウンターのリニューアル前は以下のような構成だったが、

  • チケット販売カウンター
  • 飲食物&グッズ販売所
  • 31アイスクリーム&ギネスビールなどの販売所(以前はカフェ営業もしていた)

このように変わった

  • チケット&グッズ販売カウンター
  • 飲食物販売所
  • (廃止)31アイスクリーム&ギネースビールの販売所

体重を気にしてなかった頃はギネスとチョコミントをかかえてレイトショーをみていたので、少し寂しいものはある。

関係ない話だが、今年のIMAXでは何かとトラブルに遭遇した。

  • 天気の子、封切り日にスクリーン不調により上映中止
  • 超実写版ライオン・キング、誤ってレーザー用のIMAX 3D眼鏡を配ってしまい、上映やりなおし。ザズーに飛びかかるスカーのところで画面が停止していたのだが、「映画の上映を一時停止した状態で館内が明るくなる」という中々レアな体験だった
  • スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム、持ち込んだIMAX眼鏡の片方のレンズが外れていてずっと片目でみていた
スガイディノス

大作映画もかけるが、映画ファンとしては他のシネコンが扱わない小規模公開の映画をかけるということで愛されていた。単に邦画洋画のみならず韓国映画やアニメ(キンプリ)の応援上映などにも力を入れていた。

自分が韓国映画をよくみるようになったきっかけは(その数年前にスノーピアサーをみてからの)2017年にここで行われていた「アシュラ・哭声・お嬢さん」という濃すぎる韓国映画上映フェアの完走からだったので非常に思い出深い。

のだが、ビルの老朽化や親会社RIZAPの不振などもあってか、ビルのオーナーがテナントの契約更新を行わない方針を発表。2019年6月をもって閉館した。

「ボーダー ふたつの世界」などディノスが営業中であればかかっていたであろう作品をまだみられていないので、やはりディノスの閉館はとてもつらい。

ちなみに同時にゲームセンターも閉業。ディノスのゲームセンターはCAVE系の弾幕シューティングに力を入れていたり(プロギアやエスプガルーダの札幌での最後の稼働ゲーセン、ここだったんじゃなかろうか)、2000年代になっても脱衣アーケードゲー(鋏を操作していくタイプの奴)があるようなところで、2010年以後は殆ど遊んでいなかったが、こちらも割と思い出深い。

閑話休題。11月にシアターキノ韓国映画特集(双の鉄拳 → 守護教師 → 国家が破産する日)を行うなどしていたが、小規模配給の映画といってもたくさんあり、それをまかなうのはシアターキノ一館だけでは厳しいということがわかる半年だった。

だが、ディノスの復活の報が。

札幌プラザ2・5……いや、前身の東宝プラザには実写版ブギーポップは笑わないを見に行った思い出があり、そういう意味でも貸し劇場ではない映画館としてあそこが復活するというのはとても嬉しい。

しかし札幌プラザ2・5は札幌難民映画祭や札幌国際短編映画祭などに重用されている会場だったので、2020年以後そちらがどうなるのかも気になるところ。新千歳空港国際アニメーション映画祭のように新千歳で行うようになるのか、それともディノスを借りる形でやっていったりするのだろうか?

ちなみにディノス、ゲーセンの方も復活するらしい。前ほどフロアは広くないだろうし、観光客向けという報道なので前のような風にはならなさそうだが、こちらも気になる。